建屋に大量の雨水流入、フレコンバッグの流出 あぶくま97条の会 遠藤 智生

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東日本を襲った台風19号と福島第一原発 真実を明かさない東電

 10月12日、伊豆半島に上陸した台風19号は、東日本に大きな被害を残した。被害に遭われた方々には、心よりお見舞い申し上げます。
 

福島県でも30人の死者を出し、1174人が避難所に避難するなど、残された爪痕は大きかった。そのうえ、一難去ってまた一難で、25日には、再び大雨が降って、新たな被害が出ている。河川の堤防が決壊し、氾濫による床上浸水1万2066棟、床下浸水2693棟におよんだ。土砂崩れ、道路の陥落などの被害が出ており、その影響は今も残っている。
 

これら一連の水害で、福島原発事故の避難者のうち、少なくとも315世帯が避難先で被害、いわゆる二重被災を受けた。
 

私の生活エリアを走っている国道288号でも河川沿いで路肩が崩落して、片側通行の状態が続いている。しかし、県内各地で修復工事しなければならない箇所が多数あるため、バリケードで囲われたままになっている。台風・大雨の影響は、今後も長く影響が残るだろう。……とまあ、福島各地で台風19号&10・25大雨による被害について書き出せば、長くなってしまう。しかし「人民新聞」読者の関心は、それで福島第一原子力発電所や福島の汚染状況に変化はあったのか、という点だろう。
 

最初に結論を言えば、空間放射線量が目立って上昇したケースは、少なくとも現時点では確認できていない。除染していない山間部の土砂が流出することで、空間線量が上がると予想していたのだが、線量計を持って帰還困難区域をはじめとする山間部を車で走行しながら何カ所か測定してみたのだが、台風前に比べて線量が跳ね上がったと断言できる場所はなかった。正確を期するためには、土壌汚染なども含めた継続的な測定・分析が必要だ。
 

ただ、住宅への浸水があった地域を中心に「粉塵」による内部被ばくの恐れがあるとは言える。河川の氾濫だけではなく、山間部からの流水・崖崩れなどによって、県内各地で床上・床下浸水だけではなく、がれき・土砂が散乱した。


放射性物質を含む粉塵
内部被ばくのリスク

 厚労省・福島県は、こうした洪水後には各種感染症の恐れがあるので、「避難所や被災した家屋において感染症のリスクが高まる」と注意を喚起している。具体的には、できるだけ肌の露出の少ない服装で、ケガをしないように長靴、ゴム手袋を付け、粉塵を吸い込まないようにマスクを着用するように、というものだ。
 

すべてを押し流した洪水の中には、し尿や劇薬物なども含まれていることは想像に難くない。郡山市では阿武隈川の氾濫により、2つのメッキ工場からシアン化ナトリウムが流出する事故が明らかになっている。放射線量が高いホットスポットや未除染の山間部から同じような流出が起こっている可能性は、大いに考えられることだ。実際に田村市、二本松市、川内村、飯舘村の4市村では、除染物を詰め込んだフレコンバッグ90袋が仮置き場から流出するというお粗末な事故が起こっている。うち49袋を回収、しかし、24袋は内容物が流出していた。
 

放射性物質を含む粉塵を吸い込んで、それが肺に吸着すれば、内部被ばくのリスクは大きくなる。今後、継続的な調査が必要だ。
 

台風による福島第一原発への影響について。原発敷地内では、6カ所でのり面や道路が崩れたが、けが人は出なかった。原発で働いている人から直接聞いた話によると、台風で構内の排水路が逆流した場所もあったという。そこから汚染した土も出てきて、知らずにそれを踏んだ作業員が、仕事を終えて退域する時に、体表面モニタの警報が鳴り、靴を除染してやっと退域できたケースが数件あったそうだ。
 

また、損傷した原子炉建屋の屋根などから、大量の雨が入り込んで地下水が上昇。東電の推計によれば、流入した水の量は約3000トン。12~13日の間に、原子炉建屋や浄化設備に設置した水漏れなどを知らせる警報が10件確認されている。これについて東電は、「警報器に雨が入り込むなどした誤作動で、汚染水が漏れた形跡はない」としているのだが、東電が真実を伏せているという可能性は排除できないだろう。
 

どうも煮え切らないレポートになってしまったが、いずれにしても台風&大雨による新たな影響が出るとすれば、これからになるのは間違いない。

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